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2026年版:東南アジア5か国の日本食市場——データで見る「どこが熱いか」

 

2026年版:東南アジア5か国の日本食市場
——データで見る「どこが熱いか」

昼間の水域を走る貨物船——食品輸出のイメージ
Photo by william william on Unsplash

「東南アジアは伸びている」という感覚論から脱して、実際の数字で市場を見る。最新データが示す5か国の実態と、市場選定への示唆をお伝えします。

「感覚」ではなく「データ」で市場を選ぶ時代へ

「東南アジアは日本食ブームが続いている」「シンガポールやタイが主要マーケット」——東南アジアへの食品輸出を検討する際、現場でよく聞く認識です。しかし最新のデータを横断すると、その「感覚」と現実の間には、いくつかの重要なズレがあることが分かります。

このズレを把握しているかどうかが、市場参入の成否を左右します。数字を地図として使い、自社の戦略に落とし込むための視点をお伝えします。

 

5か国の輸出データ——「知っているつもり」を覆す数字

まず、農林水産省の輸出実績データをもとに、東南アジア主要5か国への日本食品輸出額と直近5年の推移を整理します。

輸出額(2025年) 前年比 主な輸出品目(1位) 特徴
ベトナム 954億円 +10.6% ホタテ貝 規模1位
タイ 735億円 +17.1% いわし 成長加速
シンガポール 563億円 +1.2% アルコール飲料 高所得市場
マレーシア 291億円 +26.3% 牛肉 成長率トップ
インドネシア 173億円 +35.5% いわし 潜在規模最大

出典:農林水産省「2025年の農林水産物・食品 輸出額上位20か国+EU」(財務省「貿易統計」をもとに農林水産省作成)

この表を見て、意外に感じた方も多いのではないでしょうか。実は、東南アジアで日本食品の輸出額が最も大きいのはベトナムです。2025年の輸出額は954億円と、タイ(735億円)・シンガポール(563億円)を大きく上回っています。

「シンガポール・タイが主要市場」という認識は古い。もちろんシンガポールもタイも重要な市場ですが、輸出額の規模で見ると、ベトナムが東南アジアの日本食品市場をリードしています。また成長率ではインドネシア(+35.5%)・マレーシア(+26.3%)が際立ちます。

3つの「意外な事実」

1
シンガポールでレストランが3,000店以上閉店しても、輸出額は増えている

2024年、シンガポールでは外食売上の低迷により3,000店以上のレストランが閉店しました。「外食不振=食品輸出も減少」と思いきや、実際には輸出額は増加しています。

その背景にあるのが外食以外のチャネルの存在です。SADSをはじめとする駐在員向けサービスや、外資系企業の法人向けケータリング・パントリー供給を通じた日本食品の需要は、現場では実感として根強くあります。外食ルートが細っても、こうした法人・駐在員チャネルが下支えしている構図です。

2
タイの和食レストランが、2007年の調査開始以来初めて減少した

タイには現在5,781店舗の和食レストランがあります。長らく増加傾向が続いていましたが、2025年の調査で調査開始(2007年)以来初めて減少に転じました。

これは市場の成熟と競争激化を示すシグナルです。「日本食というだけで売れる」時代が終わりつつあることを示しています。タイ市場で勝つには、単なる日本産の看板ではなく、明確な差別化が求められます。

3
シンガポールのGNIは日本の2倍以上——高単価商品の受け皿として別格

シンガポールの1人当たりGNI(2024年)は74,750ドルで世界第8位。日本の36,000ドル(世界30位)の約2倍です。人口約600万人という小さな市場でありながら、世界第8位の日本食品輸出先になっている理由がここにあります。

「小さいから非効率」ではなく、「高所得層が厚いからプレミアム商品が売れる」という市場です。高付加価値商品のテスト市場、またはブランドポジション確立の起点として機能しやすい特性があります。

 

データから導く「国別・戦略の分岐点」

5か国のデータを整理すると、戦略の方向性によって「今すぐ売上を作りに行く国」と「中長期で育てる国」が分かれてきます。

今すぐ売上を狙う
ベトナム規模・成長額ともに東南アジア1位。市場の勢いを活かしたボリューム戦略に向く。
シンガポール高所得市場×プレミアム需要。SADSなど駐在員向けサービスや法人チャネルでの引き合いも現場では根強い。
中長期で育てる
インドネシア人口2億7,500万人・成長率63%。認証取得に時間がかかるが潜在規模は最大。
マレーシア成長率91%でトップ。ハラール認証取得を起点に中東・インドネシアへの展開も視野に。

タイはどう位置づけるか:輸出額383億円と市場規模は依然大きいが、和食レストランの初減少というシグナルが出ています。「伸び続ける市場」という前提を持ち込まず、差別化された商品・チャネル戦略で臨む必要があります。

見落としがちな「規制データ」——参入前に必ず確認を

輸出額や成長率と同じくらい重要なのが、各国固有の食品規制です。準備が整った段階で規制に引っかかると、数か月単位のロスが生じます。特に注意が必要な規制をまとめます。

各国の主な食品輸入規制(要注意項目)
シンガポール 「部分水素添加油脂(トランス脂肪酸の主原料)」を含む食品の製造・輸入・販売が禁止。お菓子・パン類などで使用されているケースがあるため要確認。
タイ ①トランス脂肪酸規制(シンガポールと同様)。②食品容器・包装の中に「食品ではないもの」を封入することが原則禁止。玩具入り菓子・おまけ付き商品は注意が必要。
マレーシア/インドネシア 人口の多数派がムスリムのため、ハラール認証なしでは主要小売・外食チャネルへのアクセスが大きく制限される。認証取得は参入前提と考えるべき。
インドネシア BPOM(食品医薬品監督庁)への製品登録が別途必要。承認まで6〜12か月を要するケースもあり、早期からの準備が不可欠。

規制の確認は「動き始める前」に:バイヤーと商談が進んでから規制の問題が発覚するケースが現場では非常に多い。成分・表示・認証の3点は、展示会出展やサンプル送付の前に必ず確認しておくことをおすすめします。

 

まとめ:データは地図。どのルートを選ぶかは、自社の商品次第

今回のデータから見えてくるのは、東南アジアは「一枚岩の市場」ではないという事実です。ベトナムの成長、シンガポールの所得水準、マレーシアのハラール起点の可能性、インドネシアの潜在規模——国ごとに全く異なる特性があります。

同時に、「伸び続けているはず」という思い込みが崩れている国もあります。タイの和食レストラン減少はその代表例です。感覚ではなくデータで市場を見ることで、こうした変化に早く気づくことができます。

ただし、データはあくまで地図です。どのルートを選ぶかは、自社の商品カテゴリ・価格帯・認証の状況・投下できるリソースによって変わります。「ベトナムが1位だから、うちもベトナムへ」ではなく、自社の強みとデータを照合することが重要です。

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