「展示会に出たのに注文が来ない」
——東南アジア食品輸出で躓く3つのパターンと、その突破口
うまくいかない理由は、商品の問題ではないことが多い。現場で繰り返し見てきた「躓きの3パターン」を整理し、それぞれの突破口をお伝えします。
やることはやった。それでも、動かない
海外の展示会に出展した。現地バイヤーに名刺を渡した。サンプルも送った。補助金も活用した。
それでも——注文が来ない。商談が前に進まない。あの展示会は何だったのか。
こういった相談を、私たちは現場で何度も受けてきました。そして気づいたのは、うまくいかない理由の多くは「商品の問題」ではないという事実です。品質は十分にある。需要もある。それでも動かないのには、別の原因があります。
私たちがこれまでの支援の中で繰り返し目にしてきた、「東南アジア食品輸出で躓く3つのパターン」を今回は正直にお伝えします。心当たりがあるパターンこそ、突破口が近いサインです。
躓く3つのパターン
3つのパターンは独立しているようで、実際には複合して起きることがほとんどです。「どれか一つ」ではなく、「どれが一番強く出ているか」という目線で読んでみてください。
展示会のブースで熱心に説明する。資料も丁寧に作った。サンプルも好評だった。なのに、その後が続かない。
このパターンに陥っている企業に共通するのは、「売り手の論理」で動いていることです。現地バイヤーが商品を見るときの判断軸は、「品質が高いか」ではありません。
彼らが実際に見ているのは、こういった問いです。
- 自分の顧客(小売店・レストラン・エンドユーザー)に、これは売れるか
- 自分のマージンは確保できるか
- 一度売れたとして、リピートが続くか
- 競合品と比べて、なぜこれを選ぶ理由があるのか
つまり、バイヤーは「いい商品か」ではなく「自分がビジネスになるか」を見ています。どれほど優れた商品でも、この問いに答えられない提案は、バイヤーの記憶に残りません。
提案資料を「バイヤーが儲かる構造」で作り直す。具体的には、①想定小売価格と販売マージンの試算、②現地での想定顧客像とその購買動機、③類似カテゴリの現地売れ筋との差別化ポイント——この3点を一枚にまとめた「バイヤー向けファクトシート」を用意するだけで、商談の前進率が変わります。「売り込む資料」ではなく「バイヤーが社内稟議を通せる資料」を渡すという発想の転換です。
サンプルは送れた。バイヤーも「面白い」と言った。現地の展示会でも反応があった。ところが、いざ輸入手続きに入ると——「この成分は現地では使用禁止」「表示が規定に合っていない」「ハラール認証がないと棚に置けない」という壁にぶつかる。
このパターンが厄介なのは、「うまくいきかけていた」だけに精神的なダメージが大きいことです。そして、規制対応のやり直しには数か月から場合によっては1年以上かかります。
東南アジア各国の食品輸入規制は、国ごとに大きく異なります。
- シンガポール:SFA(シンガポール食品庁)の認可。特定の食品添加物・着色料に制限あり
- マレーシア:人口の約6割がムスリムのため、ハラール認証なしでは主要小売に入れないケースが多い
- タイ:タイFDA(食品医薬品局)への事前登録が必要。ラベルのタイ語表示も求められる
- インドネシア:BPOM(食品医薬品監督庁)登録+ハラール認証の両方が必須。登録には6〜12か月要することも
「とりあえず動いてから考える」では間に合わないのが規制対応です。
「動く前の規制チェック」を必須プロセスに組み込む。展示会出展やサンプル送付の前に、①対象国の輸入禁止・制限成分リストとの照合、②ハラール認証の要否確認、③現地ラベル要件(言語・表示項目)の確認——この3点を必ず行う。費用と時間はかかりますが、「参入できない」と後から分かるコストに比べれば圧倒的に安上がりです。現地の輸入代理店や規制対応の専門機関に事前相談するのが最も確実な方法です。
日本国内での小売価格をベースに輸出価格を決めてしまうと、現地の棚では2つの極端な結果に陥ります。
「高すぎて売れない」——輸送コスト・関税・インポーターマージンが積み上がり、現地消費者の購買力とかけ離れた価格になる。バイヤーも「これでは動かない」と判断する。
「安すぎてブランドが毀損する」——逆に「とにかく売りたい」と価格を下げすぎると、現地では「安い日本食品」として認識され、プレミアムポジションを失う。一度ついた価格イメージは修正が難しい。
この問題の根本は、日本側の原価思考で価格を決めていることにあります。輸出価格は、現地の棚から逆算して設計する必要があります。
「逆算の3ステップ」で輸出価格を設計する。
ステップ1:現地の競合商品の棚価格を把握する。類似カテゴリで、現地消費者が「これなら買う」と感じる価格帯を現地調査またはバイヤーへのヒアリングで確認する。
ステップ2:棚価格からコストを逆算する。棚価格 → 小売マージン(通常20〜35%)→ インポーターマージン(通常20〜30%)→ 関税・輸送コスト を引いた残りが、自社の受け取れるFOB価格の上限になる。
ステップ3:その価格で事業として成立するかを判断する。成立しないなら、商品・仕様・ターゲット市場の見直しが必要。これは「撤退」ではなく「設計の修正」です。
自己診断:あなたの会社はどのパターンか
3つのパターンを読んで、「うちはこれかもしれない」と感じたものはありましたか。以下のチェックリストで確認してみてください。
現場からの観察:3つのパターンは、それぞれ独立した問題に見えて、実際には連動しています。価格設定が甘いまま規制対応に入り、規制対応に追われてバイヤーへのフォローが疎かになる——といった形で複合するケースが最も多い。一つ直せば全体が動き始めることもあります。
まとめ:「動けていない」のではなく「設計が違う」だけかもしれない
展示会に出ても注文が来ない、サンプルを送っても商談が進まない——そういった状況は、商品力の問題であることはほとんどありません。
私たちが現場で見てきた限り、多くの場合は「設計の問題」です。バイヤーへの伝え方、規制への備え、価格の構造——このどれか(あるいは複数)がずれている。
裏を返せば、設計を直せば動き始める可能性が高いということでもあります。「数年頑張ったのに全部ダメだった」ではなく、「あの3つのうちどれかを先に直していれば」というケースを、私たちは繰り返し見てきました。
どのパターンに当てはまるか分からない、複数当てはまる気がする——そういった場合は、まず現状を整理するところからお手伝いします。ぜひ一度、お気軽にご相談ください。
どのパターンか、
一緒に確認しませんか。
現在の取り組み内容をお聞きした上で、どこに課題があるかを整理し、次のアクションをご提案します。まずはお気軽にご相談ください。
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