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東南アジアへの食品輸出、最初の一国はどこにすべきか?

 

シンガポールでの現地事業運営や、自治体・食品メーカーの海外展開支援に携わる中で、最も相談が多いテーマの一つが「最初の輸出先選び」です。東南アジア4か国のデータを横断し、商品カテゴリ別の市場選定基準をお伝えします。

「準備はできている。でも、どこから?」

輸出に向けて動き始めた。展示会にも出た。現地バイヤーとも名刺交換した。

それでも、多くの企業が最初に止まるのが——「結局、最初にどの国を攻めればいいのか分からない」という壁です。

私たちはこれまで、東南アジア進出を検討する多くの食品事業者と向き合ってきました。その中で強く感じるのは、「入口の国選び」で、その後の輸出の成否がかなり決まるという事実です。

東南アジアといっても、シンガポール・マレーシア・タイ・インドネシアでは、食品の輸入規制、流通の構造、消費者の購買力、日本食品への親和性がそれぞれ大きく異なります。「隣の国だから似たようなもの」という感覚で動くと、参入後に想定外のコストと時間を費やすことになります。

この記事では、4か国の市場データを整理したうえで、商品カテゴリ別に「最初の一国」の選び方をお伝えします。

 

「とりあえずシンガポール」が必ずしも正解ではない理由

現場では、「まずはシンガポールから」という声をよく聞きます。

確かに、英語が通じ、所得水準も高く、日本食への理解も深い。東南アジア進出の入口としては非常に優秀です。

ただし、私たちが現場で何度も見てきたのは、「シンガポールで成功=ASEANで成功」ではないという現実です。市場規模は約610万人。競争は激しく、すでに多くの日本食品が並んでいます。「置けば売れる」時代ではありません。データで見ると、その構図はより鮮明になります。

項目 シンガポール マレーシア タイ インドネシア
人口 約610万人 約3,600万人 約6,600万人 約2億8,700万人
1人当たりGDP 約9.8万USD 約1.2万USD 約8,000USD 約4,900USD
日本食品輸出額
(2023年)
約563億円 約291億円 約735億円 約173億円
主な輸入規制 SFA認可・
検疫がゆるい
ハラール認証
が事実上必須
FDA事前登録
制度あり
BPOM登録・
ハラール必須
市場特性 競合が多く
単価競争激化
中間層拡大中 日本食への
関心が急上昇
若年人口が
豊富
参入難易度 低〜中 中(認証次第)

出典:農林水産省「農林水産物・食品の輸出額」(2025年)、World Bank(2023年)、各国当局公開資料をもとに作成

シンガポールは市場規模が小さく(人口約610万人)、すでに多くの日本食品ブランドが参入しています。単価を維持しながら棚を確保するには、相応のプロモーション投資が必要です。一方でタイやインドネシアは人口規模が大きく、今後の成長余地が大きいものの、規制対応に時間がかかります。

ポイント:シンガポールは「テスト市場」として優れていますが、スケールを目的とした場合は費用対効果が合わないケースがあります。目的(テスト vs 売上規模)によって最適解が変わります。

 

商品カテゴリ別「最初の一国」の選び方

市場選定の軸は主に3つです。①規制クリアのしやすさ、②現地バイヤー・インポーターの存在感、③消費者の日本食リテラシー。この3点を商品カテゴリと照合することで、最初の一国が絞り込めます。

シンガポール
テスト市場・プレミアムブランド構築
もし御社の商品が、プレミアム価格帯で展開できる、ギフト性がある、ストーリーが伝わりやすい——そのいずれかに当てはまるなら、シンガポールは最初の一国として機能しやすいでしょう。英語対応が可能で規制情報も整備されており、現地の日系インポーターも多い。まず輸出の実績と知見をつくりたい企業にも向きます。
向く商品:菓子・酒類・高付加価値加工食品
タイ
規模×アクセスのバランス型
ある程度の売上規模を早期に狙いたいなら、タイは最初の本命市場として機能しやすい選択肢です。人口6,600万人、バンコクを中心に日本食文化が急速に浸透しており、現地の和食レストラン数はASEAN最多水準。FDA登録が必要ですが、支援する代理店も整ってきており、参入のハードルは確実に下がっています。
向く商品:調味料・麺類・冷凍食品・飲料
マレーシア
ハラール対応で市場が一気に広がる
御社がハラール認証を取得済み、または取得を検討しているなら、マレーシアを起点にした展開を強くおすすめします。人口の約6割がムスリムのため認証なしでは市場の大部分にアクセスできませんが、逆に取得すればインドネシア・中東市場へも波及しやすい。取得コストを中長期で回収できるポテンシャルがあります。
向く商品:ハラール対応済みの加工食品・調味料
インドネシア
中長期の巨大市場
人口2億8,700万人はASEAN最大。若年層が多く日本文化への親和性も高い、将来性ナンバーワンの市場です。ただし、今すぐ売上を立てたい企業には向きません。BPOM登録とハラール認証が必須で、承認まで6〜12か月かかることも。体制と認証が整った段階での参入が現実的な戦略です。
向く商品:ハラール対応済みの菓子・インスタント食品

判断フロー:自社商品に当てはめる3つの問い

  • ハラール認証を現時点で取得している、または取得予定がある → マレーシア・インドネシアを候補に
  • まず輸出の実績をつくり、社内の知見を蓄えたい → シンガポールでテスト参入を
  • 規模感のある売上をある程度早期に狙いたい → タイが最初の本命市場として機能しやすい

実務上の注意点:どの国を選んでも、現地のインポーター(輸入業者)との関係構築が事実上の参入の鍵を握ります。東南アジアでは日系インポーターが和食レストランへの食材供給を担うケースが多く、まず彼らとの接点をつくることが現地流通への近道です。

 

まとめ:「なんとなく」で決めてはいけない、最初の一国

私たちはこれまで、「国選びを間違えたことで、数年単位で遠回りした」というケースを数多く見てきました。

輸出は、商品力だけでは決まりません。「どの市場から入るか」で、必要な認証、現地パートナー、価格設計、販促コストが大きく変わります。だからこそ、最初の一国は「なんとなく」で決めるべきではありません。

まずは、「自社商品が、どの市場で勝ちやすいか」を冷静に見極めること。それが、輸出を"点"で終わらせず、"事業"に変える第一歩だと私たちは考えています。

この記事でお伝えしたフレームを参考に、まず「自社商品はどのカテゴリか」「ハラール認証はどうするか」という2点を整理することから始めてみてください。判断に迷ったときは、ぜひ私たちにご相談ください。

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